(書面の交付を受ける義務)
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、当該依頼者から、 当該探偵業務に係る調査の結果を犯罪行為その他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない。
『探偵業の業務の適正化に関する法律』より引用
違法な依頼は受けられない探偵
探偵業法第七条は、依頼人から調査結果を犯罪行為や違法な差別的扱い、その他違法行為に利用しないこと。
そして、そのことを書面に残して交付することを、探偵に義務付けています。
義務付ける対象は、探偵であり依頼人ではありません。
この書面の交付をしなかった場合、依頼人はお咎めなしですが探偵は罰せられます。
「犯罪行為」とは、つぎのようなことです。
ストーカー行為や、襲撃することを隠して所在調査や行動調査を依頼する。
対象者の弱みを握って脅迫する目的、または誹謗中傷等の目的を隠して、行動調査を依頼することなど。
「違法な差別的扱い」は、就職差別や結婚差別などの調査依頼のことです。
実際に起きた犯罪目的の調査依頼
実際に暴力団員が、敵対する別の暴力団関係者の所在調査を、探偵に依頼した事件があります。
その探偵業者が、所在を突き止めて報告した直後、依頼人暴力団員がその暴力団員を狙撃。
逗子ストーカー殺人事件も、加害者が探偵に被害女性の所在調査を依頼したことで起きました。
発端は加害者の前で、警察が被害女性の結婚後の姓と現住所を読み上げたことです。
そのうる憶えした情報を手掛かりに、加害者は探偵に依頼したのです。
逗子ストーカー殺人事件と探偵と行政
この事件を再現したTV番組、「ザ・世界仰天ニュース」によれば、加害者は「お世話になった女性を探してほしい」と言って探偵に依頼したそうです。
この探偵が、逮捕されたというニュースは聞かないので、「調査結果を犯罪に利用しない旨の書面の交付」はしていたのだと思います。
その後、この探偵の下請け情報屋が身分を偽って市役所に電話をかけ、巧みな話術と恫喝で被害女性の現住所を聞き出しました。
この情報屋は、事件が起きた日の一年後、「不正競争防止法違反」を適用されて逮捕されています。
被害女性は、市役所にストーカー被害にあっていることを伝え、住民基本台帳の閲覧制限申請を出していました。
にもかかわらず、情報屋の電話に対応した職員が、女性の現住所を教えたのです。
この職員が誰なのかは、結局特定されませんでした。
差別調査など刑罰法令違反も禁止
この7条でいう「犯罪行為」とは、刑法だけでなく刑罰法令違反も含みます。
たとえば、依頼人がDV夫で保護命令が出ていることを隠している場合。
このDV夫が、「家出した妻を探してほしい」と偽って、探偵に行方調査依頼をすることは犯罪行為です。
「違法な差別的扱い」は、対象者が探偵に頼んで被差別部落出身者かどうかを調べること。
その結果を元に、採用を取り消したり婚約を破棄することを目的とした依頼になります。
「その他違法行為」は刑法、民法に関係なくすべての違法行為を指します。
調査結果を、犯罪行為・違法行為に利用しない旨の書面の交付しても、それだけでは不正利用を防げるとは限りません。
探偵業者には、依頼人を見極める眼力が求められます。
第1条 目的 | 第2条 定義 | 第3条 欠格事由 |
第4条探偵業の届出 | 第5条名義貸しの禁止 | 第6条探偵業務実施の原則 |
第7条書面の交付を受ける義務 | 第8条重要事項の説明等 | 第9条探偵業務の実施に関する規制 |
第10条秘密の保持等 | 第11条(教育) | 第12条名簿の備付等 |
第13条報告及び立ち入り検査 | 第14条(指示)・第15条(営業停止等)・16~20条原文 |
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