違法収取証拠排除法則

裁判や調停では、証拠を多く集めておくことが非常に有利になります。

そのため、多くのクライアントは探偵を雇って証拠を収集します。

しかし、「探偵に不倫の証拠を撮ってもらうと、プライバシー侵害や個人情報保護法違反になりませんか?」と心配される方が少なくありません。

また、相手の同意を得ずに撮影した証拠が裁判で認められるのか疑問に感じる方もいます。

こうした不安は、「プライバシー」や「個人情報」といった言葉が独り歩きし、必要以上に深刻に受け止められているためです。

しかし、探偵の隠し撮りは、違法行為を伴わない限り、プライバシー侵害や個人情報保護法違反には該当しません。

今回は、探偵が収集する証拠と「違法収集証拠」の関係について詳しく解説します。

違法収集証拠排除の法則とは?

違法収集証拠排除法則とは、違法な手段で集めた証拠は裁判で認められないという法則です。

これは「排除法則」とも呼ばれ、特に刑事裁判で厳しく適用されます。

刑事裁判では、検察や警察といった国家権力が違法な手段で証拠を集めた場合、冤罪を防ぐためにその証拠は無効とされます。

そのため、刑事裁判では違法収集証拠が認められることはほとんどありません。

民事裁判での違法収集証拠

一方、民事裁判では刑事裁判ほど厳しくありません。

原則として、裁判に提出できる証拠に大きな制限はありません。

ただし、判例では「明らかに反社会的な手段で、精神的・肉体的自由を拘束するなどの人権侵害的な方法で収集した証拠」は、裁判で証拠能力が否定される可能性があります。

これに基づいて考えると、探偵の行う隠し撮りや隠し録音も問題となりそうに思えますが、実際には問題ありません。

探偵が合法的に収集したビデオや音声データは、民事裁判でも有効な証拠として認められることが多いのです。

探偵が隠し撮りした証拠は有力な証拠となる

隠し撮り動画裁判証拠

探偵の仕事の一環として、行動調査があります。

この調査では、尾行や張り込みを通じて対象者の行動を監視し、必要な場面を記録します。

例えば、不倫調査であれば、浮気相手との密会やラブホテルの出入りを隠し撮りします。

また、不正行為をしている社員の行動を記録することもあります。

これらの行為は一見すると「盗撮」とも受け取れますが、法的には問題ありません。

探偵が合法的に行う隠し撮りは、プライバシー侵害には当たらず、民事裁判の証拠としても有効です。

違法収集証拠となる場合

ただし、隠し撮り自体は違法ではなくても、違法行為を伴って収集した証拠は無効となります。

例えば、浮気が自宅で行われている場合、探偵が他人の敷地に無断で入り、窓越しに撮影した場合は住居侵入罪に該当し、その映像は違法収集証拠と見なされます。

このように、不法侵入などの違法行為を伴う証拠は、裁判で無効とされる可能性が高いのです。

探偵が隠し録音した音声データも有力な証拠

隠し録音 裁判証拠

探偵がICレコーダーやスマートフォンを用いて隠し録音した音声データも、民事裁判で有効な証拠となります。

例えば、夫が浮気相手とレストランで親密に話している様子や、企業の機密情報を売ろうとしている社員と競合他社との会話を録音することが考えられます。

この場合、探偵が隣の席に座り、会話を録音することは問題ありません。

また、ホテルの壁にコンクリートマイクを当てて会話を録音する行為も、違法ではありません。

そのため、これらの音声データは民事裁判においても証拠として提出できます。

音声データを裁判で提出する際の注意点

音声データを裁判に提出する際には、反訳書(録音内容を文字に起こした書面)を作成する必要があります。

また、音声データそのものはUSBやCD-Rに保存し、裁判所の指示に従って提出します。

反訳書と音声データを合わせて提出することで、有効な証拠となります。

違法収集証拠となる音声データとは?

ただし、音声データも違法な手段で収集された場合は、裁判で無効となります。

例えば、探偵が対象者の自宅に無断で侵入し、盗聴器を設置して得た会話データは、住居侵入罪に該当するため、違法収集証拠として裁判で認められません。

依頼者自身が証拠を集める場合

依頼者自身が証拠を集める際、夫や妻の日記や手帳を許可なく撮影したり、スマホの中のLINEやメールを写真に撮る行為は、基本的には問題ありません。

配偶者のスマートフォンからデータを転送することも、家庭内での範囲であれば違法にはなりません。

これらの証拠は、プリントアウトすれば裁判でも有効な証拠として提出できます。

家族間の証拠収集と違法収集証拠の認定

ただし、別居中の夫婦の場合は注意が必要です。

夫婦であっても、別居している場合はプライバシー侵害のリスクが生じることがあります。

判例:別居中の住居侵入

過去の判例では、浮気を疑った夫が別居中の妻の家に合鍵で無断で侵入し、証拠を撮影しようとしたケースがあります。

この場合、夫が住居侵入罪で訴えられ、敗訴しました。

たとえ家が夫の名義であっても、夫婦関係が破綻している場合、無断で侵入することは住居侵入罪に該当する可能性があるのです。

したがって、別居中にパートナーの家に無断で入って証拠を集めた場合、それは違法収集証拠として認定され、裁判で無効となる可能性が高いです。

まとめ

探偵が収集する証拠は、違法行為を伴わない限り、民事裁判で有効な証拠として認められることが多いです。

しかし、違法収集証拠は無効となるため、依頼者や探偵は法律の範囲内で証拠を集める必要があります。