探偵業務の中でも浮気調査は非常に特殊で、常識や先入観を持ち込むと、調査が失敗に終わる可能性が高まります。
対象者の行動は予測不能であり、一見当たり前に思えることが全く通用しない場面も多々あります。
そのため、探偵には柔軟な思考と観察力が求められます。
本記事では、実際の調査現場で起こり得る不測の事態や、それを乗り越えるための心構えについてお伝えします。
常識に囚われないことが成功のカギ
探偵の現場では、次のような「当たり前」が必ずしも通用するわけではありません。
マンションのエントランスから出てくるとは限らない
対象者が建物の正面から出てくるという先入観を持って待機していると、見逃す危険があります。
裏口や別の出口を利用する場合も少なくありません。
会社の社員通用口を利用するとは限らない
社員通用口が設けられている場合でも、対象者がその口を利用するかは分かりません。
以前当探偵事務所が行った、区役所に勤める公務員夫の調査では、17時になると職員通用口とともに一般客が出入りする2カ所の大きな玄関からも大勢の職員が退出していました。
定時に出てくるとは限らない
仕事帰りを尾行する場合、対象者が定時に退社するとは限りません。
残業や突発的な外出、あるいは早退など、予定外の行動がしばしば見られます。
店舗や建物の出口が一つとは限らない
尾行中、対象者が入った店や建物には複数の出口が存在する可能性があります。
もし全ての出口を把握していないと、対象者を見失うリスクが高まります。
探偵の経験談
弊社探偵が現場で遭遇した、とあるケースをご紹介しましょう。
ある対象者(自営業の夫)を尾行していた際、池袋のマンションに入りエレベーターに乗りました。
このマンションは10階建てで、ワンフロアに4部屋程度が配置された一般的な建物です。
後に判明しますが、このマンションは浮気相手の自宅でした。
エレベーターホールで、探偵は不自然な点に気付きました。
ホールの突き当たりに「管理人室」と書かれた鉄のドアがあったのですが、受付窓や人の気配が一切ありません。
また、ドアの横はただの壁です。
怪しさを感じた探偵は建物の周囲を確認することにしました。
マンション側面に回ると1階に、車10台ほどが駐車可能な住民用の駐車場がありました。
この配置を見て、探偵は「管理人室」が存在するスペースが無いことに気づきました。
そして、駐車場の鉄ドアを開けてみるとそこは先ほどのエレベーターホール。
「管理人室」という表示がダミーであり、実際には駐車場に繋がっていることがわかったのです。
マンションのオーナーが、防犯対策として管理人がいるように見せかけたのでしょう。
そうなると、対象者がこのドアから出る可能性もあります。
そこで探偵は、マンションの正面玄関だけではなく、このエレベーターホールと「管理人室」ドアも直視できる場所から張り込むことにしました。
そして、2時間後、エレベーターホールに降りてきた対象者と浮気相手の女性は、正面玄関を利用せず、「管理人室」のドアから駐車場へと抜け、マンションを後にしました。
もし探偵が正面玄関だけが見える場所で張り込んでいたら、この動きを見逃して浮気調査は失敗していました。
このケースでは、建物の構造を確認し、対象者の行動を先入観なく予測したことが成功に繋がりました。
調査が失敗する理由の一つに、「常識的な行動を対象者も取るはずだ」という思い込みがあります。
探偵にとって、固定観念や先入観は調査の妨げにしかなりません。
柔軟な対応力が求められる探偵の仕事
このように、探偵の現場では事前の計画や推測だけでは不十分です。
実際にその場に立ち、状況を冷静に観察し、必要に応じて迅速に方針を変える柔軟性が必要です。
また、不測の事態にも冷静に対処できる精神力が重要です。
例えば、対象者が思いがけないルートを通ったり、予定外の行動を取った場合でも、それを即座に察知し対応する能力が求められます。
先ほどのマンションのケースでも、現場の状況を適切に観察し、柔軟に張り込み場所を変えたことで成功に繋がりました。
まとめ
探偵の浮気調査は、対象者の行動を先入観なく捉え、常に柔軟に対応する必要があります。
常識的な行動パターンを基に計画を立てることも大切ですが、それに固執せず、状況に応じた行動が求められるのです。
実際の調査現場では、不測の事態や予測不能な動きが多く発生します。
しかし、それらを乗り越えることで、依頼者に正確な情報を提供し、信頼を勝ち取ることができるのです。
探偵の仕事は簡単ではありませんが、その分やりがいも大きいものです。